未分類

ファイナンス基礎〜財務諸表が読めて、事業の儲かり方を試算できて、価値と資金調達とリスク管理まで一通りわかる〜

きたたく

0. そもそもファイナンスって何?

ざっくり言うと、ファイナンスは次の問いに答える学問です。

  • この事業は儲かるのか?(収益性)
  • いつ資金が足りなくなるのか?(資金繰り)
  • 会社の価値はいくらか?(企業価値評価)
  • 資金をどう調達するのが最適か?(融資・株式・VCなど)
  • リスクをどう管理するか?(分散投資・ポートフォリオ)

会計が「記録」だとしたら、ファイナンスは「判断」の道具です。

1. 財務諸表(BS/PL/CF)をつなげて理解する

1-1. 3つの財務諸表の役割

財務諸表は、会社の状況を別々の角度から写す3枚の写真みたいなものです。

  • BS(貸借対照表):ある時点の「財産」と「借金」と「持ち分」
  • PL(損益計算書):一定期間の「儲けの成績表」
  • CF(キャッシュフロー計算書):一定期間の「現金の増減の理由」

重要ポイント:BSは必ず釣り合う

資産 = 負債 + 純資産(自己資本)

  • 資産:持っているもの(現金、売掛金、設備など)
  • 負債:借りているもの(借入金、買掛金など)
  • 純資産:株主の持ち分(資本金、利益の積み上げ)

1-2. BS(貸借対照表)の読み方:会社の体力を読む

BSで見るべきは大きく3つです。

① 安全性(倒れにくさ)

流動比率 = 流動資産 / 流動負債 

ざっくり「短期の支払いに耐えられるか」

自己資本比率 = 純資産 / 総資産 

高いほど借金に依存していない

② 資金の固定化(身軽か重いか)

現金が薄くて、設備や在庫が多いと、身動きが取りにくい

③ レバレッジ(借金で伸ばしているか)

借入で投資して伸びることもあるが、返済負担が増える

1-3. PL(損益計算書)の読み方:儲け方の構造を読む

PLは基本的にこうです。

売上 − 費用 = 利益

もう少し分解すると、

  • 売上総利益(粗利) = 売上 − 売上原価
  • 営業利益 = 粗利 − 販管費(人件費・家賃・広告など)
  • 経常利益 = 営業利益 − 支払利息 + 受取利息など
  • 当期純利益 = 経常利益 − 税金など

まず見るべき指標

  • 粗利率(粗利 / 売上):「商売の強さ」
  • 営業利益率(営業利益 / 売上):「本業の稼ぐ力」
  • 固定費と変動費の関係:「損益分岐点に直結」

1-4. CF(キャッシュフロー計算書)の読み方:黒字倒産を防ぐ

CFは「現金が増えた・減った理由」を3つに分けます。

  • 営業CF:本業で現金が増えたか(基本プラスが望ましい)
  • 投資CF:設備投資やM&Aで現金が出たか(成長期はマイナスが多い)
  • 財務CF:借入・返済、増資、配当で現金が動いたか

利益と現金は違う

PLで利益が出ていても、現金が増えないことがあります。

典型例:売上は立った(PLは良く見える)でも売掛金が増えて、現金回収が遅い
CFは悪化しやすい

1-5. 3表はこうつながる

  • PLの最終結果(当期純利益)は、BSの純資産(利益剰余金)に積み上がる
  • CFの最終結果(現金増減)は、BSの現金残高に反映される

つまり、PLで稼いで、CFで現金になって、BSに蓄積されるイメージです。


ミニ演習①:3表を“読み解く”練習(答え付き)

例として簡単な数字を置きます。

例:ある会社のPL(1年)

  • 売上 1,200
  • 売上原価 600
  • 販管費 350
  • 支払利息 30
  • 税率 30%

問1:粗利、営業利益、当期純利益は?

答え

  • 粗利 = 1,200 − 600 = 600
  • 営業利益 = 600 − 350 = 250
  • 税引前利益 = 250 − 30 = 220
  • 税金 = 220 × 30% = 66
  • 当期純利益 = 220 − 66 = 154

2. 簡易的な損益計画(P/L計画)を立てる

2-1. 損益計画は「ドライバー(要因)」で作る

損益計画のコツは、売上をいきなり当てるのではなく、売上の構造に分解することです。

例:売上の作り方(よくある分解)

  • 売上 = 単価 × 数量
  • サブスクなら:売上 = 月額 × 平均課金ユーザー数 × 12
  • 店舗なら:売上 = 客単価 × 客数

費用も同じで、

  • 変動費:売上に比例(仕入、決済手数料、配送費など)
  • 固定費:売上と関係なく発生(家賃、正社員人件費、基本広告費など)

2-2. まずは“限界利益”で見ると一気にわかりやすい

  • 限界利益 = 売上 − 変動費
  • 限界利益率 = 限界利益 / 売上

そして

  • 営業利益 = 限界利益 − 固定費

ここまでできると、損益分岐点がすぐ出ます。

損益分岐点売上

損益分岐点売上 = 固定費 / 限界利益率

2-3. ミニ演習②:カフェの損益計画を作る

あなたが小さなカフェを始めるとします。

  • 客単価:800円
  • 1日客数:120人
  • 営業日数:25日/月
  • 原価(材料費など):売上の35%
  • 固定費:150万円/月(家賃・人件費など)

問1:月商はいくら?
問2:月の営業利益はいくら?
問3:損益分岐点売上はいくら?

答え

  • 月商 = 800 × 120 × 25 = 2,400,000円(240万円)
  • 変動費 = 240万円 × 35% = 84万円
  • 限界利益 = 240 − 84 = 156万円
  • 営業利益 = 156 − 150 = 6万円

損益分岐点売上:

  • 限界利益率 = 1 − 0.35 = 0.65
  • 損益分岐点売上 = 固定費150万円 / 0.65 ≒ 231万円

→ 月商240万円ならギリギリ黒字。
「客数が数%落ちるだけで赤字」という意思決定に活かせます。

2-4. もう一段レベルアップ:シナリオ分析

損益計画は「当てる」より「揺れに耐える」ことが大事です。

  • 強気:客数 +10%
  • 普通:想定通り
  • 弱気:客数 −10%

この3ケースで利益がどう変わるかを見ると、
「広告で客数を守るべきか」「固定費を下げるべきか」など判断材料になります。


3. 企業価値評価の入口:PER/PBRを理解する

3-1. PER(株価収益率)

PER = 株価 / 1株あたり利益(EPS)

  • PERが高い:将来の成長期待が高い(または利益が一時的に小さい)
  • PERが低い:割安に見える(ただし、成長性が低い/リスクが高い可能性)

注意点

  • そもそも赤字企業はPERが使いにくい(EPSがマイナス)
  • 会計上の一時的な利益でブレる

3-2. PBR(株価純資産倍率)

PBR = 株価 / 1株あたり純資産(BPS)

  • PBRが高い:資本を効率的に増やせる企業(やブランド・知財が強い企業など)
  • PBRが低い:資産価値に比べ市場が低評価、または稼ぐ力が弱い可能性

すごく使える関係式(覚えると便利)

ざっくり、
PBR ≈ PER × ROE
(ROE = 利益 / 自己資本)

「PBRが高いのは、ROEが高いから?それともPERが高いから?」
と分解して考えられます。


4. DCF法:会社の価値を将来キャッシュから計算する

4-1. DCFの考え方

会社の価値は、将来生み出すキャッシュ(FCF)を、リスクに応じた利率で割り引いた合計です。

4-2. フリーキャッシュフロー(FCF)とは

代表的な形(覚え方として):

FCF = 税引後営業利益(NOPAT)
+ 減価償却(会計上の費用だが現金支出なし)
− 設備投資(CAPEX)
− 運転資本の増加(ΔNWC)

運転資本(NWC:「売掛金 + 在庫 − 買掛金」)が増えると、現金が吸われます。


4-3. DCFの手順

  1. 1〜5年のFCFを予測する
  2. 割引率 r(リスクの高さ)を決める
  3. 5年以降をまとめる「ターミナルバリュー」を置く
  4. すべて現在価値に割り引いて合計する
  5. 借金などを調整して株主価値を出す


4-4. DCFの限界(特にスタートアップ)

未来の予測が難しいほど、結果がブレる

割引率や成長率の置き方で結論が変わる
→ だから現場では、DCFは「1つの見方」で、複数手法を併用します。


5. スタートアップでよく使うVC法(ベンチャーキャピタル法)

VC法は「出口(Exit)から逆算」します。

5-1. VC法の手順

  1. 将来のExit価値を見積もる(例:売上×倍率、利益×倍率)
  2. VCが求めるリターン(例:5年で10倍)で割り引く
  3. そこから「今の会社価値(ポストマネー)」を出す
  4. 調達額から持分比率(希薄化)を計算する

5-2. 数字例(わかりやすいVC法)

5年後に上場やM&Aで、会社価値が 120億円 になる見込み。
VCは「5年で10倍」を求めるとします。

現在価値(ポストマネー)= 120億 / 10 = 12億円

いま 3億円 を調達したいなら、

  • VCの持分比率 = 3億 / 12億 = 25%
  • プレマネー(調達前価値)= 12億 − 3億 = 9億円

ここで大事なのは、

「今いくらに見えるか」より「Exitから逆算して、この条件で投資が成立するか」
という発想です。

詳細の参考記事:https://bloomcapital.jp/ma-keyword/venture-capital-method

6. 資金調達の手法:何を選ぶべきか判断できるようにする

6-1. 大枠:借金(Debt)か、株式(Equity)か

借金(融資・社債)

  • 返済が必要(キャッシュフローの安定が重要)
  • 金利がコスト
  • 経営権は薄まりにくい
  • 条件(担保・保証・財務制限条項など)が付くことがある

代表取締役は個人で連帯保証をする場合があるため、会社が潰れたら共倒れになります(実体験)。慎重にするのはもちろん、契約時は弁護士に条件や契約書の確認を依頼しましょう。

株式(増資・VC・エンジェル)

  • 返済不要
  • その代わり持分が薄まる(希薄化)
  • 成長支援やネットワークが得られることもある
  • 株主の権利(議決権、優先株条件など)が絡む

6-2. 代表的な調達手段を整理

手段返済主なコスト向いている状況注意点
銀行融資必要金利キャッシュフローが読める、信用がある返済負担、条件
社債必要利息規模が大きい企業発行コスト、信用力
株式発行(増資)不要持分希薄化成長投資を急ぎたい経営権・条件
VC・エンジェル不要希薄化+条件高成長の見込み、Exit前提期待値が高い
クラウドファンディング形式による手数料/利息/希薄化商品性が強い、共感が集まる事前の発信が重要
助成金・補助金不要申請工数研究開発・雇用など要件に合う報告義務、使途制限

6-3. 選び方の思考フレーム

次の4つで考えると判断しやすくなります。

  1. 資金の使い道:運転資金か、成長投資か(広告・採用・開発)
  2. 返済可能性:営業CFが安定してプラスか
  3. スピード:いつまでに必要か(資金ショートが先か)
  4. コントロール:経営権をどれだけ守りたいか

ABOUT ME
きたたく
きたたく
学習工学博士
自由に生きる人を増やしたい大学教員・経営者。
生成AIで経済的自由を達成するための知識を発信中。
元不登校から飛び級で博士号(工学)を取得した連続起業家。
プログラミングを通じて「U-22 プログラミングコンテスト CSAJ 会長賞」「IoT Challenge Award 総務大臣賞」「人工知能学会研究会 優秀賞」など40件を超える賞を受賞。
スマホアプリ会社を創業(売却)し、プログラミングスクールの会社を創業(20店舗経営)

著書:知識ゼロからのプログラミング学習術(秀和システム) 他多数
記事URLをコピーしました