諸葛亮、PR戦略を学ぶ 〜外資系マーケターの三国志〜─ 対話形式で学ぶ、環境分析・STP・4Pのフレームワーク ─
【登場人物】
諸葛亮(孔明):言わずと知れた天才軍師。

外資系マーケター:タイムスリップで三国志の世界へ。ブランド戦略やPRの専門家。

劉備:仁義の人。諸葛亮を迎え入れ、軍師塾の設立を後押しする。

関羽:劉備の義兄弟。忠義の象徴。

張飛:劉備の義兄弟。豪胆なる猛将。

第一幕:軍師塾にて、マーケティングの基礎を学ぶ
シーン1:諸葛亮からの相談

……というわけで、我々も“イメージ戦略”を強化したいと考えているのだが、いかんせん戦場の兵法ばかりを磨いてきた。現代のマーケター殿、どうか力を貸してくれぬか?

はい、もちろんです。ではまず、状況を理解するために“環境分析”から始めましょうか。現代では“PEST分析”や“SWOT分析”といった手法を使って、戦局や世の中の状況を整理するのが一般的です

ほう。“ペスト”? “スウォット”? 聞き慣れぬ言葉だな……

外来語に聞こえるかもしれませんが、大丈夫。要は、政治・経済・社会・技術など、軍の外部環境や内部状況を分析して、我々が強みを活かせるポイントや弱点を補う方策を洗い出すんです
環境分析(PEST/SWOT)の例
PEST分析
- P(Political:政治的要因):曹操軍と孫権軍の勢力が伸張。地方豪族との関係、官僚組織の動き。
- E(Economic:経済的要因):諸国での穀物価格、税率、交易ルートの掌握状況。
- S(Social:社会的要因):民衆の不安・期待、他軍への印象、地元有力者の支持動向。
- T(Technological:技術的要因):火計や兵器、情報伝達の速度(狼煙や伝令使)など。
SWOT分析
- S(Strengths:強み):劉備の“仁義”と諸葛亮の軍略、人望。
- W(Weaknesses:弱み):曹操軍や孫権軍と比べて財政基盤が脆弱、兵力が少ない。
- O(Opportunities:機会):民衆が“正義の味方”を求めている。周辺群雄が曹操や孫権に不満を抱えている。
- T(Threats:脅威):曹操・孫権によるネガティブキャンペーン、圧倒的な軍事力。

張飛のまっすぐな性格は、弱みとなるやもしれぬ。しかし、口にすれば争いを招くであろう。ここは黙しておくべきか…。
シーン2:STPフレームワークを導入

なるほど。まずは外部と内部の環境を整理して、我々の置かれた立場を客観的に見るわけだな。次はどうすればよい?

はい。次はSTPという考え方で、具体的に誰にどうアピールするかを決めていきましょう

エス…ティー…ピー…? まさか、黄巾党の暗号ではあるまいな

いえいえ、これもマーケティングの基本フレームワークです。Segmenting(セグメンテーション)、Targeting(ターゲティング)、Positioning(ポジショニング)の3ステップを通じて、我々が狙うべき相手や提供価値を明確化するんです
1. Segmenting(セグメンテーション)

周辺地域や軍閥、民衆をいくつかのグループに分けて考えます。
たとえば、
農民層:家族を守りたい、安定した生活を望む
知識層・官僚層:正統性・公正さを重んじる
商人層:交易ルートや市場の安定を重視
流民・難民層:保護してくれる存在を求める
など、特徴や課題に応じてグループ化していきます

ふむ、“一律に民衆”ではなく、それぞれの考えや置かれた状況によってアプローチを変えるのだな
2. Targeting(ターゲティング)

そして、その中で“どの層に優先的に訴求するか”を定めます。
劉備殿の“仁義”という強みから考えると、庶民層や流民層など、守ってほしい・頼りたいと考える人々は特に効果的なターゲットですね

要するに、あらゆる層に無差別に攻めるんじゃなく、味方にしやすい層から確実に取り込むわけか。わかったぞ!
3. Positioning(ポジショニング)

最後に、他軍との違いを明確にしながら、私たちが“どんな価値を提供する存在か”を明確に示します。
このように差別化がはっきりすればするほど、ターゲット層は『ここが自分にとって一番安心できる』と感じやすいのです

なるほど……兵は国の支えであり、民は国の根幹。それを一人ひとりの心を掴む形で行うということか。まさに新しい兵法だな
第二幕:4Pを使った具体策
シーン3:4Pの手ほどき

ここまでは理解した。だが、具体的にはどうやって民衆の支持を得ればよいのだ?

それを考えるのが、4Pと呼ばれるフレームワークです。
Product(製品/サービス)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(販売促進)を整合性を持たせて設計するのが肝心なんですよ

ほう。4つの要素をうまく組み合わせることで、我が軍の信頼を高めるわけか
1. Product(製品/サービス)

私たちが提供する“製品/サービス”とは何でしょう? 戦いそのものではなく、“安全・安心・正義”の提供です。
劉備殿や諸葛亮殿が直接“現場”へ赴くことで、『見える安心感』を与えるのも大切です
兵糧や物資の保護、治安の維持など、“住民を守る”という価値を高品質なサービスとして提供します。

つまり、我々は『正義』を商品として扱い、民に“安心という価値”を買ってもらうという認識か。うむ、わかりやすい
2. Price(価格)

価格とは必ずしも貨幣だけとは限りません。民衆が『支持するために払うコスト』と考えてください。
そのリスクを下げるために、私たちは“恩恵”や“守り”をわかりやすく提示する必要があります
『劉備軍への協力』という“手間”や“リスク”が大きいと感じれば、誰も協力したがりません。

なるほど。無理な徴兵や過度な徴税は避け、民衆にとって割の良い“費用対効果”を感じてもらうわけだな
3. Place(流通/チャネル)

次に、“どのルートで価値を届けるか”。現代で言えば、オンラインストアや実店舗などですが、この世界では地域の名士や市場、町の集会所が重要です。
- 名士や学者、商人など、意見リーダーが集まる場で『劉備軍がいかに民衆を思っているか』をしっかり伝える。
- 地域ごとの拠点や護衛隊を増やし、“劉備軍の存在感”が常に感じられる環境を整えるのです

俺たちが市場や集会所に行って、講演会のようなものを開くというのか? 武勇に自信はあるが、話すのは苦手だな……

そこは私たちもサポートします。『この軍は頼れる』というメッセージが伝われば、兵だけでなく民衆を味方につけられますよ!
4. Promotion(販売促進/PR)

最後にPromotion。まさにPR活動に相当する部分です。
- キャッチフレーズ:『民を守る、義の劉備』など。
- 口コミ施策:名士や商人を“インフルエンサー”に見立て、良い評判を広めてもらう。
- イベントや行脚:劉備殿や諸葛亮殿が直接民のもとを訪れて声を聞く“公開対話”。
これらを統合的に運用することで、軍への信頼を持続的に高めていけるんです

なんだか頭が混乱しそうだが、やるしかないな! 俺も少しは話術を勉強するか……
第三幕:曹操・孫権による“ネガティブキャンペーン”とその対処
シーン4:噂が広がる

報告いたします! 曹操軍、孫権軍が『劉備は偽善者だ』『裏では賄賂を受け取っている』などと悪い噂を流しているようです!

なんだと……?民衆の期待を裏切るような話が広がれば、一気に支持を失いかねないぞ……

敵も、こちらの“イメージ戦略”を恐れているということか。マーケター殿、どう対処すべきか?

ここが危機管理(クライシスマネジメント)のポイントです。まずは“事実確認”。噂がどこから出ているか、どれほど広がっているかを把握しましょう。その上で……
ネガティブキャンペーン対策の基本
- ファクトチェック・証拠の提示
- 「賄賂を受け取っている」という噂なら、それを否定する証拠を示す。
- 公の場で『我が軍の財務状況』を一部開示し、透明性をアピール。
- 誠実なコミュニケーション
- 劉備や諸葛亮本人が、疑惑に対し“真摯に回答”する場を設ける。
- 必要以上に敵を罵倒せず、冷静さを保つことで、かえって信用を高める。
- 味方の声を活用する
- すでに劉備軍の恩恵を受けた民衆や各地の有力者に、正しい情報を広めてもらう。
- 「彼らは私たちを救ってくれた」という実体験が、最も強い証拠となる。

兵法でも『偽情報には冷静に対処せよ』とある。だが、マーケティング的にも同様に、迅速かつ誠実な情報開示が鍵というわけだな

フェイクニュース対策……。まるで見えない敵と戦うようだが、正々堂々とやってやろう!
第四幕:成果と今後の展望
シーン5:作戦の結果

民衆の評判が以前にも増して良くなっている。『一度は疑ったが、やはり劉備軍は裏切らなかった』という声が多いようだ

見よ、どの村にも我が軍に協力を申し出る者が増えてきたぞ。マーケター殿、おかげで大きな成果が出たな

皆さんの協力あってこそですよ。現代のマーケティングフレームワークも、こうして実践されると力を発揮するものですね
シーン6:諸葛亮の言葉

兵法もまた、人の心をいかに動かすかが本質だ。こうしてマーケティングを学んでみると、その根底は同じ……いや、さらに洗練されていると感じる

世に平穏をもたらすには、やはり民の心を掴むことが先決。兵力だけではだめなのだな。
これからも諸葛亮の軍師塾と共に、マーケター殿の“戦略”を取り入れて民を安心させる仕組みを築いていこうではないか!

私も微力ながらお手伝いします。軍師塾の生徒たちにも、このフレームワークをしっかり教えていきましょう
まとめ:マーケティングの要点
- 環境分析(PEST・SWOT)
- 内外の情勢を的確に把握することで、戦略の土台を固める。
- STP(セグメンテーション/ターゲティング/ポジショニング)
- どの層に何を訴求し、競合とどう差別化するかを明確にする。
- 4P(Product/Price/Place/Promotion)
- “提供価値”を製品・価格・流通・PRの各面で落とし込み、整合性を持たせる。
- 危機管理(クライシスマネジメント)
- フェイクニュースやネガティブ情報に対し、迅速かつ誠実に対応し、ブランドを守る。
かくして、諸葛亮率いる軍師塾は、外資系マーケターを招いて環境分析やSTP、4Pといった新たな戦略を導入し、劉備軍の評判を高めることに成功しました。
その過程で、兵法の天才である諸葛亮が辿り着いた結論──「人の心を掌握する戦略」こそが、未来を切り開く決め手──は、現代社会にもまったく通じるものです。
